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令和元年8月27日に、東京地裁において衝撃的な判決が下りました。
今回の路線価否認判決のもとになった事案は、相続財産である賃貸不動産の相続税評価額をめぐって相続人と国税当局が争っていたものです。
納税者が相続税申告の際、財産評価を「路線価方式」で算定して申告をしましたが、国税当局は路線価による評価が著しく不適当であるとして、この事案の対象であるマンションについて路線価による評価を認めず、路線価による評価額の4倍近くに及ぶ不動産鑑定評価額によって更正を行いました。
相続人は、更正の取り消しを求めて東京地方裁判所に訴えを提起しましたが、判決の結果、相続人の訴えは棄却され、この事案については路線価による評価を否認して、不動産鑑定評価額で評価することとして、納税者の敗訴となりました。
相続人はこの判決を不服として控訴していますが、なぜ、このような事が起きたのでしょう?
■相続不動産概要
この申告時に申告した不動産は2物件ありました。
A物件:購入額8.3億円 借入金6.3億円
鑑定評価額:7.5億円 申告評価額(路線価方式)2億
申告評価額は、鑑定評価額の約26.5%・購入額の23.9%
B物件:購入額5.5億円 借入金4.3億円 売却金額5.1億円
鑑定評価額:5.1億円 申告評価額(路線価方式)1.3億円
申告評価額は、鑑定評価額の約25.8%・購入額の約24.3%・売却額の約26%
※B物件は申告の1年後に5.1億円で売却している。
■東京地裁の判事内容
① 財産評価基本通達の定める評価方法を用いるという「形式的な平等」を貫くことで、税負担の実質的な公平を著しく害することが明らかである「特段の事情」がある場合には「ほかの合理的な方法によって評価されることが許される」ものと解するべきである。「財産評価基本通達6(この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の評価は、国税庁長官の指示を受けて評価する)の採用」
② 申告額は各鑑定評価額の約26%、25%にとどまっている。
③ 銀行からの借入を行い、不動産を購入したことで相続税の支払いを免れている。
④ 銀行の稟議書等から、相続税の負担軽減を目的としていることが示されている。
⑤ 不動産評価額は客観的な交換価値を示すと考える
⑥ 形式的な平等を貫くと、銀行からの借入、不動産購入をしなかった他の納税者との間で租税負担の実質的な公平を著しく害することが明らかである。
■結論
地裁の判決内容の③・④は、相続税の節税対策として王道とも言える方法です。
すべての相続の不動産購入に関して更正処分を行っているわけではなく、また、借入による不動産購入それ自体を否定しているわけでもありません。
私見ではありますが、借入によって不動産を購入することで相続税を圧縮し、申告後一定の期間が経過したのち売却する、金融商品の売買にも似た取引とみられた場合には注意が必要になってくると考えられます。
今回のこの判決により、今まで曖昧だった「時価と申告評価額の著しい乖離」、「過度な相続税対策」について時価が評価額の4倍という1つの指標が出来た事は、判断基準として参考になるものと考えられます。
最後に、今回の判決によって、路線価による評価が覆されるリスクが明らかになりました。高額の相続事案の節税対策についてはこれまで以上に慎重に検討することが求められます。
今後、相続対策や不動産購入をお考えの際には、是非、税理士法人CROSSROADまでご相談ください!!