フリーランス新法で企業が気を付けるべきこととは?
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令和3年10月1日から「適格請求書発行事業者」の登録受付が開始されました。6月のコラムでも掲載いたしましたが、改めて『インボイス制度』のおさらいをしたいと思います。本格的に導入されるまでには、まだ数年の猶予と経過措置期間がありますが、対応については今からでも考えておくことをお勧めいたします。
消費税が導入されたのは1989年4月1日。以降30余年の間、世論の反発を受けながらも、1997年に3%から5%、2014年に8%と段階的に引き上げられ、2019年10月には10%(飲食料品や新聞は軽減税率適用で8%のまま)まで引き上げられました。
消費税の仕入税額控除の方式として、インボイス制度による「適格請求書発行事業者」になるための申請の受付が10月1日より開始されましたが、適格請求書=インボイスを発行できるのは届出をした「適格請求書発行事業者」に限られており、この「適格請求書発行事業者」になるためには登録申請書を提出し、登録を受ける必要があります。申請後は審査があり、問題がなければ適格請求書発行事業者として登録され、国税庁のホームページに公表されることになります。
適格請求書を交付することが困難な以下の取引は、適格請求書の交付義務が免除されます。
① 公共交通機関である船舶、バス又は鉄道による旅客の運送(3万円未満のものに限ります。)
② 出荷者が卸売市場において行う生鮮食料品等の譲渡
(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限る。)
③ 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の譲渡
(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限る。)
④ 自動販売機により行われる課税資産の譲渡等(3万円未満のものに限る。)
⑤ 郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る。)
原則、免税事業者が適格請求書発行事業者としての登録を受けるためには、消費税の課税事業者となる必要があります。すでに課税事業者であれば登録しておくべきですが、問題となるのはこれまで納税義務のなかった消費税の免税事業者です。
では、今まで消費税の納付義務のなかった免税事業者は登録すべきかどうか?
・登録しない - インボイスの発行ができない
・登録する - インボイスの発行ができる
インボイスの発行ができないと、取引先の課税事業者が消費税計算において仕入税額控除の適用を受けられないことになります。予測できるのは、その取引先は仕入税額控除を受けるため「適格請求書発行事業者」との取引を望み、インボイスが出せない免税事業者は取引先を失ったり、新規の取引先を獲得しにくくなったりという可能性が大いに考えられます。
インボイスを発行できる登録事業者になれば済む話ではありますが、消費税の課税事業者になるということなので、これまで免税事業者であった消費税の納税義務が生じます。取引先を失うのか、それとも消費税を払うのかの選択が迫られることになります。
インボイス制度がすでに導入されているEU圏内及び英国おいては、フランスの免税水準は日本と同じく1千万円、ドイツは600万円、イギリスは1200万円です。免税であっても、インボイスを発行するために免税を放棄し、課税事業者となることを選択する事業者が多数です。
フランスとイギリスの標準税率は20%、ドイツは19%なので、課税事業者になると税負担も大きくなりますが、実際生き残っているのは「免税の放棄」をして課税事業者を選択した小規模事業者です。課税事業者を選択しない事業者は、ほとんどが淘汰されてしまっています。
10月1日より登録受付は開始されましたが、インボイス制度は開始後、6年間 (2023年10月から2029年9月までの間)は、免税事業者等からの課税仕入れについて、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられており、段階的に仕入税額控除を廃止していきます。
・2023年10月 → 80%控除
・2026年10月 → 50%控除
・2029年10月 → 完全廃止
小規模経営で売上1,000万を下回る免税事業者が市場から排除されるという悲劇があってはならないと思いますが、
大きな岐路に立たされることとなるのは間違いありません。
インボイス制度への対応については、ぜひ税理士法人CROSSROADへご相談ください。