コラム

インボイス制度における経理処理について

税務

インボイス制度が導入され、経理処理・保存書類の変更など、日々対応に追われている方もいらっしゃるかと思います。
今回はクレジットカードの利用と、振込手数料の負担の処理についてご紹介いたします。

まずは、ほとんどの企業が使われているであろう、クレジットカード決済の経費についてです。

クレジットカードの明細でインボイスに対応しているか?

答えは「対応していません」。

なぜかというと、クレジットカードの利用明細書はカード会社が発行したものであり、課税資産の譲渡等を行った事業者が発行したものではないからです。また、課税資産の譲渡等の内容や適用税率など、適格請求書の記載事項も満たしていないため、一般的に適格請求書には該当せず、クレジットカード利用明細と帳簿の保存のみでは、消費税法上の仕入税額控除は認められません。

課税資産の譲渡等を行った事業者から受領した適格請求書等を保存することで、仕入税額控除の適用が認められます。

 

ETCクレジットカードを用いた際の取り扱いについては、「ETC利用照会サービス」に登録をすると利用証明書が発行されるので、その証明書を適格簡易請求書として利用することができます。高速道路の利用が多頻度で、全ての高速道路の利用に係る利用証明書の保存が困難な時は、クレジットカード会社から受領するクレジットカード利用明細書と、利用した高速道路会社及び地方道路公社などの任意の一取引に係る利用証明書をダウンロードし、併せて保存することでも差し支えありません。

※併せて保存するETCクレジットカード利用明細書については、個々の高速道路の利用に係る内容が判明するものに限ります。これには取引年月日や取引の内容、課税資産の譲渡等に係る対価の額が分かる利用明細データ等を含みます。

 

2つ目は、振込手数料の負担は売り手か買い手かどちらが負担するべきか、という内容です。

 

今までは仕入先が負担してくれていた手数料がインボイス制度導入にあたり当方で負担してほしいと言われることもあるかと思います。

企業間の取り決めとして「売り手側が負担をする」と書面による合意がある場合を除き、原則として、振込手数料は代金を支払う側が負担することになります。

売り手側が手数料を負担する場合と、買い手側が手数料を負担する場合のそれぞれの対応についてご説明いたします。

 

■売り手側が手数料を負担する場合

① 売り手が買い手に対して適格返還請求書を交付する

売り手が振込手数料を負担する場合は、ほとんどが代金から手数料を差し引くことが多いです。その差し引いた分を手数料分の値引きをしたこととして適格返還請求書の交付が原則、必要になります。ただ、振込手数料が1万円以上になることは考えにくいため、適格返還請求書の交付義務は免除されます。

 

② 売り手が買い手に対して仕入明細書を交付する

こちらは、本来の取引とは別に、売り手から買い手に対して「手数料の取引」が発生したとして仕入明細書を発行するという方法です。本来の取引金額と振込手数料を別々に処理するため、売上額が減少するということがありません。

 

③ 買い手が売り手のために金融機関に対して振込手数料を立替払いしたものとする

買い手が売り手に代わって振込手数料を立替払いしたものとする場合、売り手は、買い手が金融機関から受け取った振込手数料に係る適格請求書、及び買い手が作成した立替金精算書等の交付を受け、振込手数料に係る仕入税額控除を行うことになります。

なお、買い手が金融機関のATMを使って振込手続を行った場合、買い手が金融機関から受け取った適格請求書、及び買い手が作成した立替金精算書等の保存は不要となります。

 

■買い手が手数料を負担する場合

① 金融機関の窓口またはインターネットバンキングを利用

金融機関の窓口、ネットバンキングで振込を行った場合は、金融機関から手数料に関する適格請求書の交付を受けることができます。交付された適格請求書を保存することで、仕入税額控除の対象にできます。

 

② 金融機関のATMを利用

ATMを利用して振込を行った場合は、金融機関は適格請求書の交付を行わなくて良いと定められているため、適格請求書の保存も必要ありません。ただし、ATMで振込をした際の手数料であることがわかるように、ATMの場所などを帳簿に記載・保存する必要があります。

 

インボイス制度について、お困りのことがございましたら税理士法人CROSSROADでお気軽にご相談ください。

 

参考資料:国税庁HP(リンク先)

クレジットカード会社からの請求明細書

インボイス制度に関するQ&A目次一覧

 

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