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今回はグループ法人税制の第7回「100%グループ内の子法人に対する中小法人向け特例措置の適用制限と事務負担の増加」について解説いたします。
■概要
税法上の中小企業法人であっても、資本金の額もしくは出資金の額が5億円以上の法人等の100%子法人等(※1)については、次の中小企業向け特例措置を適用することができません。
≪適用ができない中小企業向け特例措置≫
・貸倒引当金繰入額の損金算入などの制度
・交際費等の損金不算入額の定額控除制度
・欠損金の損金算入などの制度
・法人税の軽減税率の制度
・特定同族会社の特別税率(留保金課税)の適用除外
今回は、これらのうち貸倒引当金・交際費・欠損金についてご説明いたします。
※1 適用を受けることができなくなるのは、大法人の100%子法人に限らず、大法人による完全支配関係がある普通法人すべてになります。
■貸倒引当金繰入額の損金算入などの制度
特定の法人を除いて、貸倒引当金繰入額を損金算入することができなくなります。ここで注意していただきたいことは、グループ法人税制(強制適用)とグループ通算制度(任意適用)ではルールが異なる点です。
グループ法人税制の対象かつ資本金等が5億円以上の法人等の完全子会社等に該当する場合は、貸倒引当金繰入額の損金算入自体をすることができません。
一方、グループ通算制度では、貸倒引当金を設定することはできますが、貸倒引当金の対象となる金銭債権から「完全支配関係がある他の法人」に対して有する金銭債権を除外しなければなりません。
■交際費等の定額控除制度
中小企業法人等では800万円までの交際費等については、全額の損金算入(定額控除)が認められていますが、資本金等が5億円以上の法人等の完全子会社等に該当する場合は、この800万円までの定額控除制度を適用できなくなります。この場合、交際費として損金算入することができる金額は、飲食などに要する費用の50%の金額までとなります。完全子会社等に該当した場合は、日々の経理処理において、交際費などを補助科目などに区分し、飲食などに要する費用を集計する必要があるため、経理事務負担が増加します。
■欠損金の損金算入などの制度
中小企業法人等では、その年度の所得を限度して繰越欠損金を全額控除することができます。一方、資本金等が5億円以上の法人等の完全子会社等に該当する場合は、欠損金の損金算入に制限が生じます。平成30年4月以後に開始する事業年度では、繰越欠損金等を控除する前の所得金額の50%を限度として、繰越欠損金を所得から控除することになります。
例えば、繰越欠損金:150万円 当期所得金額:100万円の場合は、中小企業法人等では課税所得金額はゼロ円になりますが、完全子会社等の場合は、課税所得金額は50万円(=100-100×50%)になり、納税が生じます。
また、法人税の欠損金の繰戻し還付制度についても制限があります。大きな損失を計上する場合に、前事業年度に繰り戻して法人税額の還付を請求することができる制度ですが、完全子会社等の場合は欠損金の繰戻しによる還付の請求は行えなくなりますので、こちらも注意が必要です。(※2)
※2 解散、事業の全部の譲渡など一定の事実が生じた場合を除きます。
■まとめ
これまで全7回でグループ法人税制の制度をご説明いたしました。
第1回 グループ法人税制の概要 支配関係と完全支配関係
第2回 グループ法人税制における資産の譲渡取引
第3回 グループ法人税制における寄附等
第4回 グループ法人税制における現物分配
第5回 グループ法人税制における受取配当金
第6回 グループ法人税制における株式の発行法人への譲渡に係る損益
第7回 グループ法人税制における中小法人向け特例措置の適用制限、事務負担の増加
グループ法人税制や組織再編税制については、ぜひ一度CROSSROADグループにご相談ください。