経理代行の利用が増えている理由と失敗しない選び方
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今回は、M&Aで株式譲渡した場合の税務上の留意点をご説明いたします。
1.株式譲渡とは
株式譲渡は、売り手企業の株主が所有する株式を買い手企業に譲渡するスキームです。譲渡会社は、基本的に株主構成が変動するだけで会社自体に大きな変化はありません。
売り手側では、個人株主であれば税率は一律20.315%となります。M&Aの対価を直接受け取ることができ、他の所得と比べて低い税率を適用できるため株主の手取り額が多くなりやすいです。
買い手側では、売り手企業が抱えるリスクを含めた権利義務のすべてを引き継ぐことになるため、事前にデューデリジェンスをしっかりとおこなう必要があります。
2.株式譲渡に係る税金の計算方法
個人が株式を譲渡した場合の税率は、所得税15.315%と住民税5%の合計20.315%となります。株式譲渡における税金は、株式譲渡により発生した含み益に対して課されることになります。もちろん、譲渡損が発生した場合には税金は発生しません。税額の計算式は以下のとおりです。
(譲渡収入-取得費-譲渡費用)×税率=税金
① 譲渡収入
譲渡収入は、M&Aにより売り手側の株主が受け取ることになる対価となり、企業の株価をもとに買い手側との条件調整により決定されます。企業の株価評価には、大きくわけて3つの手法があります。
(1)コストアプローチ(時価純資産+営業権法など)
主に評価対象企業の貸借対照表の「財産的価値」及び「純資産価値」に着目して価値を評価する手法
(2)マーケットアプローチ(マルチプル法など)
上場している同業の類似企業や、過去のM&Aの類似取引事例など、「類似する企業・事業・取引事例の各種財務指標」と比較することによって相対的な価値を評価する手法
(3)インカムアプローチ(DCF法など)
評価対象企業において将来見込まれる利益やキャッシュフローに基づき価値を評価する手法
② 取得費
取得費は、「実際の取得費」と「譲渡収入×5%」を比較して金額が大きな方を採用します。
「実際の取得費」は、売り手企業の「資本金」「資本準備金」と一致するケースが多いですが、過去に創業時の出資額と異なる金額で株式を購入した場合など、一致しないケースもあります。
③ 譲渡費用
譲渡費用は、M&Aの仲介会社やアドバイザーへの手数料などがあります。
3.売り手側の留意点
売り手側の留意点は、株式譲渡対価に係る税金がいくらになるのかが最も重要になります。前述のとおり、株式譲渡所得に課される税率は一律となります。株式譲渡所得は、給与など他の所得とわけて税金の計算をするので、累進課税のように所得に応じて税率が上がるということはありません。
株式譲渡をした場合の税金の申告と納付時期について、所得税は、株式の引渡し日の翌年2月16日から3月15日までに税金の申告及び納付の手続きが必要となります。住民税は、普通徴収と特別徴収の2パターンがあります。普通徴収の場合は、株式譲渡をした翌年の6月、8月、10月、1月の4回にわけて納付する必要があります。特別徴収の場合は、株式譲渡をした翌年の6月から1年間給与から天引きされることになります。
4.買い手側の留意点
買い手側の留意点として、「株式の取得価額として資産計上される価額」と「中小企業事業再編投資損失準備金制度」についてご説明します。
① 株式の取得価額として資産計上される価額
株式譲渡の際に買い手側で発生する支払いは、株式譲渡対価に加えて、仲介会社への仲介手数料(着手金・中間報酬・デューデリジェンス費用・成功報酬)があります。仲介手数料のうち、着手金以外はすべて株式の取得価額として資産に計上します。
②中小企業事業再編投資損失準備金
中小企業事業再編投資損失準備金という制度は、株式譲渡対価の70%相当額を取得した事業年度に全額損金算入することができ、その後、5年間の据え置き期間を経て、6年後から1/5ずつ益金算入することができる制度です。この制度を使うためには、株式の取得価額が10億円以下(付随費用を含む)で、買い手企業が一定の中小企業(資本金1億円以下。大企業の子会社等は除く。)、かつ、事前に経営力向上計画の認定を取得する、などの要件があります。
今回は、M&A税務の留意点(株式譲渡の場合)についてご説明いたしました。
M&Aに関するご相談については税理士法人CROSSROADにご連絡ください。