コラム

外国上場株式に係る課税関係

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今回は、日本国内に居住している個人(以下「居住者」といいます。)が所有する外国上場株式の譲渡及び配当に係る課税関係について説明をいたします。

1.外国上場株式を譲渡した際の源泉徴収

日本の居住者が外国株式を譲渡した場合には、現地国においては非居住者となるため、一般的には売却益に対して現地国では源泉徴収されず、その所得は全額が日本において課税されることとなりますが、この場合の課税関係については、日本の上場株式の場合と同様に20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の源泉徴収がされます。

外国上場株式の取得及び譲渡の際には、原則としてその時点のTTM(電信売買相場の仲値)で邦貨換算を行い、そこで生じた為替差損益については株式に係る譲渡所得に含めて計算します。日本国内の証券会社を通じて行われた取引の場合には特定口座の利用が可能となります。これに対して、外国の証券会社の場合には、特定口座の仕組みそのものがないことから譲渡益に対する源泉徴収が行われることはなく、自身で譲渡損益の計算を行うことになります。

 

2.外国上場株式の配当金を受け取った際の源泉徴収

外国上場株式の配当金を受け取った場合の課税関係については日本と現地国との間で二重課税の状態が生じます。例えば、米国株の配当の場合は、日米条約により原則10%が米国で源泉徴収され、その後、日本でも課税関係が生じますが、国内証券会社を経由する場合には、国外源泉徴収税額を差し引いた後の金額に対し源泉徴収されます。そして、確定申告を行う場合には、配当総額を支払確定日のTTM等で円換算し、控除された外国税額はTTB(電信買相場)で換算のうえ外国税額控除によって二重課税の状態を回避します。

 

3.確定申告の際の留意事項

所得税法においては、居住者はすべての所得が課税の対象となる旨定められているところであり、外国上場株式の譲渡及び配当から生じた所得についても原則として確定申告が必要となります。また、譲渡損失が生じた場合には、利益が生じている他の特定口座との通算や損失を以後3年間繰越すために確定申告を行うことができます。

しかしながら、①特定口座内において源泉徴収がされている場合、②年収2000万円以下で給与所得・退職所得以外の所得(株式の申告分離課税による所得も含みます)が20万円以下の場合、③NISAの非課税限度枠を利用している場合については、日本の株式の場合と同様に確定申告を要しないものとされています。

 

確定申告を行う場合には、申告分離課税が原則であり、これによって3年以内に生じた譲渡損失の繰越控除することや当年度に生じた譲渡損失を3年間繰越すことができますが、これらは日本国内の証券会社等を経由した場合に限られます。直接外国の証券会社等と取引をした場合の譲渡損失は、あくまでも国外において譲渡損失が生じたものであり、日本における上場株式等の譲渡損失には該当しないため、確定申告において譲渡損失の繰越控除は適用されません。

また、配当金についても、日本国内の証券会社等を経由した場合には申告不要を選択できるなど日本株の場合と基本的には同じですが、国外の支払者から直接配当金の支払いを受ける場合には、総合課税か申告分離課税かのいずれかを選択することになります。

なお、総合課税を選択した場合には、外国税額控除の適用を受けることは可能ですが、配当控除は適用されないこと、申告後には課税方式を変更できないことについてもご留意ください。

 

何かご不明な点がございましたら、税理士法人CROSSROADにお気軽にお問い合せください。

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