中小企業におけるM&A ー未来を拓くための前向きな選択肢ー
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令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、「防衛特別法人税」が導入されます。これは、法人税に付加して課される新しい税目です。
計算方法は、税額控除等を差し引く前の法人税額(基準法人税額)から500万円を控除し、その残額に4%を乗じる仕組みです。たとえば基準法人税額が5,000万円の企業であれば、(5,000万円−500万円)×4%=180万円を追加で納める必要があります。
500万円の基礎控除が設けられているため中小法人への配慮はありますが、資本金1億円超の法人や安定的に利益を上げる企業の多くは対象になります。背景には、防衛費を段階的に拡充し、国内総生産(GDP)の2%水準まで引き上げるという政府方針があります。その財源を企業にも求める新たな課税枠組みが今回の制度です。
導入によって法人実効税率は0.8〜0.9ポイント上昇します。東京都で外形標準課税が適用される法人をモデルにすると、現在30.6%前後の実効税率が31.5%前後へと変わります。数値上は「わずかな増加」とも映りますが、重要なのは法人税に新しい付加税が加わったという事実そのものです。
企業にとって直ちに資金繰りを圧迫する負担ではありません。ただし利益が同じでも税額が増える分、手元資金は確実に減ります。大企業なら数千万円規模、中堅企業でも数百万円規模の追加負担が想定され、長期的には投資や成長資金に影を落とす可能性があります。
会計処理でも注意が必要です。税効果会計では将来の法人税率をもとに繰延税金資産や負債を評価するため、税率改正があるたびに見直しが求められます。今回の制度も決算書や注記に反映させる必要があり、特に上場企業では準備不足が決算の遅れにつながるリスクがあります。早めの体制整備が欠かせません。
税制の歴史を見れば、一度導入された税は短期で終わるとは限りません。今回も“数年間だけ”と考えるより、法人課税が厚みを増す流れの一環と捉える方が自然です。
結局のところ、防衛特別法人税の本質は「1%弱の増加」ではなく、新しい税が制度として加わった点にあります。経営者に求められるのは、冷静に数字を読み解き、将来の資金計画に織り込むことです。資金繰りに余裕を持たせ、制度改正を前提に経営を設計することが安心につながります。
税率や税金の増加は不安をもたらしますが、知識と準備によって安心へ変えることができます。その積み重ねが企業の競争力を支える第一歩です。
数字が読めれば、未来が読める。
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