令和8年10月1日をまたぐ取引のインボイス控除割合の取り扱いについて
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銀行融資の審査において、決算書の中でも特に重視されるのが「貸借対照表」です。
貸借対照表は「ある時点の財務状態」を示し、企業の安全性・返済能力・資金繰り・経営姿勢まで読み取れるため、銀行側は細かい部分まで丁寧に確認します。
■自己資本比率(会社の体力を測る指標)
まず銀行が確認するのは、企業の「体力」、つまり純資産の厚みです。
<自己資本比率が重要視される理由>
・自己資本が手厚い会社は赤字に耐えることができる
・景気変動時にも返済能力を維持することができる
・追加借入の余力があると判断される
なお、自己資本比率の計算は次の通りです。
自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産 × 100
<銀行の評価目安>
30%以上:健全・積極融資先として評価
20%前後:一般的な中小企業の標準値
10%未満:財務基盤が弱く、融資には慎重
債務超過:原則融資は困難(ただし、明確な経営改善計画がある場合や資本性ローン等の活用を除く)
自己資本は、企業の土台です。
ここが弱いと、他の指標が良くても融資は伸びにくくなります。
■流動比率・当座比率(短期の返済能力を見る)
銀行が次に重視するのが、1年以内に返済できる資金力(支払能力)があるかを見ます。
<流動比率>
流動資産 ÷ 流動負債 × 100
・120〜200%が目安です。
・100%を切ると「運転資金不足」と判断される可能性があります。
・流動比率が低い会社は、普段の資金繰りがタイトで倒産リスクが高いと判断される可能性があります。
<当座比率(より厳しい指標)>
当座資産 ÷ 流動負債 × 100
・現金・預金・売掛金など、すぐに現金化できる資産の判定
・ボーダーラインは80%
・50%未満は、「資金繰りが危険」のサインとなります。
銀行側は、支払能力がどうかという視点を重視します。
現金・預金は月商2~3カ月分あれば十分と判断されますが、それよりも多ければ銀行側は安心して融資を行います。
■借入金の構成と返済能力(融資の核心部分)
銀行にとって一番重要なのは、当然ながら返済能力です。以下の点を細かく見ます。
<チェックポイント>
・短期借入金が多すぎないか
・借入金の総額が年々増え続けていないか
・返済額と営業キャッシュフローのバランスは適正かどうか
・金利負担が経営を圧迫していないか
・複数銀行から借りすぎていないか
<最も重視される数値>
返済負担比率(DSCR)= 営業CF ÷ 元利返済額
・1.0以上 → 返済可能と判断される
・1.5以上 → 安定的に返済できる
・1.0未満 → 審査は厳しい
借入金額よりも「返済原資(キャッシュフロー)で返せるか」が最重要ポイントとなります。
■売掛金・棚卸資産の質(リスクを内包しやすい領域)
貸借対照表の中でも、銀行が特に注意して見るのがこの2つとなります。
<売掛金のチェックポイント>
・回収サイトが長すぎないか
・回収遅延の取引先がないか
・長期滞留債権や貸倒れの見込みはないか
・特定の得意先に依存しすぎていないか
売掛金は「本当に回収されるか」が重要です。
架空売上など粉飾の疑いがないかどうかがチェックポイントになります。
<棚卸資産のチェックポイント>
・過剰在庫はないか
・不良在庫で価値が落ちていないか
・在庫回転率が悪化していないか
・在庫評価方法が妥当か
売上高が伸びていないにもかかわらず、棚卸資産だけが増えている場合、売れない在庫が増えたのではないかと疑われてしまいます。
■固定資産の適正性(投資判断・成長余力を見る)
銀行側は、固定資産が適切に管理・活用されているかなどもチェックします。
<注目されるポイント>
・過大投資の有無
・減価償却の計上漏れや不自然な処理がないか
・老朽化資産を放置していないか
・遊休不動産や機械がないか
・投資に見合った売上効果が出ているか
銀行側は「投資→収益」の繋がりを非常に重要視します。
■役員貸付金・仮払金・未収金(銀行側が嫌う三兄弟)
銀行側は、決算書にこれらの科目があると、まず理由を疑います。
<役員貸付金>
・経営者の資金使い込みを疑われる
・税務上の問題もある
<仮払金(最も嫌われる科目)>
・精算されていない=経理管理が甘い
・隠れた経費・私的流用と見られやすい
<未収金>
・架空売上の典型的な科目
・「内容不明のできない未収金」や「長期滞留未収金」があると審査は厳しくなる
これらは、銀行側からの信頼を大きく損なう項目なので、真っ先に改善すべき項目となります。
■貸借対照表・損益計算書・キャッシュフローの整合性
どれだけ数字が良くても、他の決算書と整合性が取れていないと銀行側の評価は下がります。
<銀行側が指摘する矛盾点>
・利益が出ているのに現預金が増えていない
・売上の増加に対して、現金化される資産(売掛金・在庫)の増加が目立つ
・設備投資をしているのに売上が伸びていない
・税金を払う余力がない
・利益が減っているのに人件費や借入金が増えている
■銀行が嫌う貸借対照表の特徴(避けたい状態)
具体的に銀行が警戒する状態を整理すると以下の通りです。
・債務超過(純資産マイナス)
・キャッシュ残高が少ない
・短期借入金頼みの資金繰り
・在庫・売掛金が異常に増加
・役員貸付金・仮払金・未収金がある
・税金・社会保険の滞納
・設備投資の割に売上が増えない
・銀行取引が不安定(リスケ等)
1つでも該当すると、融資時の評価が低くなります。
■貸借対照表を改善するための実務的なポイント
ここからは「改善の方向性」を提示させていただきます。
<すぐにできる改善>
・役員貸付金・仮払金の解消
・在庫整理と売掛金の早期回収
・交渉による支払サイト(資金繰り)改善
・経費の見える化と固定費削減
<中期的に行う改善>
・営業キャッシュフローの黒字化
・短期借入→長期借入への組み替え
・利益体質の強化
・不採算部門・遊休資産の整理
<長期的に行う改善>
・自己資本(純資産)の積み上げ
・増資や内部留保による財務基盤強化
・設備投資の回収計画の策定
・銀行との信頼関係構築(メインバンク制度)
貸借対照表は「過去の結果」ですが、改善は今日からできます。
■まとめ
銀行が貸借対照表で重視するポイントをまとめると次の通りとなります。
①自己資本比率
②流動比率・当座比率
③借入金の構成と返済能力
④売掛金・棚卸資産の質
⑤固定資産の適正性
⑥役員貸付金・仮払金などの不適切科目
⑦損益計算書・キャッシュフロー計算書との整合性
銀行側が融資審査で貸借対照表を重視するのは、会社の財務状況や返済能力、資金繰りの健全性を一目で把握できるからです。審査では、単に数字を見るだけでなく、その背後にある資金の流れやリスクの有無まで評価されます。また、貸借対照表を改善することは、融資だけでなく会社の経営力そのものを高めることにつながります。
ご不明点などがございましたら、ぜひ一度税理士法人CROSSROADへお気軽にご相談ください。