コラム

仮想通貨の「財産債務調書」への記載

税務

 2017年は仮想通貨元年といわれ、仮想通貨市場は大きく成長を遂げ、2017年初めには約2兆円だった時価総額が、年末には約20倍の40兆円前後にまで膨れ上がり、投資で億を超える資産を築いた「億り人」と呼ばれる人が続出しました。
 しかし、2018年に入ってからは、アジア圏での規制報道による市場の暴落、日本の仮想通貨取引所大手コインチェック(株)での約580億円分の仮想通貨「NEM(ネム)」の外部からの不正アクセスによる流出など、明るくない話題で注目を集めております。

 昨年の仮想通貨全体の市場規模が急激に伸びた状況から、今年の確定申告では、仮想通貨の申告件数が多くなることが予想されます。平成29年12月には国税庁が「仮想通貨に関する所得の計算方法について」を公表し、仮想通貨に投資する人の確定申告への関心が高まっています。確定申告するなかで一定要件に該当する場合には、税務署に保有の仮想通貨について「財産債務調書」への記載・提出が必要になりますので、そのことについて触れていきたいと思います。

 

 「財産債務調書」とは、平成27年度税制改正において、所得税・相続税の申告の適正性を確保する観点から、一定の基準を満たす人に対し、その保有する財産及び債務に係る調書の提出を求める制度です。

提出義務者は、以下の要件を満たす人になります。

①その年分の各所得金額の合計額が2000万円を超えること。

②その年の12月31日において、その価額の合計が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産(有価証券等)を有すること。

 

 上記要件を満たした場合、「財産債務調書」の提出が必要になります。いわゆる富裕層が対象ですが、その他の所得と仮想通貨の売却益の合計額で2000万円を超え、その他の財産と保有している仮想通貨の含み益を合わせた価額の合計額が3億円以上の場合には、情報を記載した同調書を税務署へ提出する必要があります。調書には、その仮想通貨の種類、数量、価額等も記載しなければいけません。その場合、自身が取引を行っている市場の12月31日時点における取引価額などを合理的な方法で算出し記載する必要があります。国内の取引所だけではなく、国外の仮想通貨取引所の口座等で仮想通貨を保管している場合であっても、財産を有する者の住所で判定するため、記載が必要になります。つまり、利確をしていなくても時価総額で判定して、その他の財産と合わせて3億円以上あれば、提出が必要ということになります。未提出には罰則規定が設けられています。

 具体的には、「財産債務調書」が未提出あるいは提出した「財産債務調書」に記載がない財産や債務について、所得税の申告漏れが生じた場合に発生する過少申告加算税や無申告加算税、重加算税といった加算税等に、更に5%が上乗せされます。逆に、「財産債務調書」に記載がある財産や債務について所得税や相続税の申告漏れが生じた場合は、加算税等が5%軽減されるという優遇策を設けています。納税者の提出意欲を促し、所得税や相続税の徴収漏れを防ごうとする意向が見受けられますが、「財産債務調書」の提出要件に該当する方は当法改正を正しく認識し、忘れず対応するようにしてください。

 

 ご不明な点があれば、税理士法人CROSSROADまでご相談ください。

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