コラム

「納税猶予の特例」終了後の取り扱いについて

税務

 新型コロナウイルス感染症の影響により、収入が大幅に減少し、納税が困難な納税者に対して、令和2年4月30日の新型コロナ税特法の成立・施行により創設された「納税の猶予の特例(特例猶予)」は、申請期限である令和3年2月1日をもって終了いたしました。しかし特例猶予終了後も納期限までに納税できない場合は、「納税の猶予」「換価の猶予」などの通常の「納税緩和制度」を利用」することができます。

1.納税の猶予とは
災害、病気、事業の休廃業などによって国税を一時に納付することができないと認められる場合や、本来の期限から1年以上経って納付すべき税額が確定した国税を一時に納付することができない理由があると認められる場合に、申請に基づいて納税が猶予される制度です。
 
◆申請要件
次の①から⑤に掲げるもののいずれかに該当する事実(納税者の責めに帰することができないやむを得ない理由により生じた事実に限ります。)がある場合は、納税の猶予を受けることができます。
 
  ①納税者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難に遭ったこと
  新型コロナウイルス感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われたことにより、備品や棚卸資産を廃棄した場合
  ②納税者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと
  納税者ご本人又は生計を同じにするご家族が病気にかかった場合、
  国税を一時に納付できない額のうち、医療費や治療等に付随する費用
  ③納税者がその事業を廃止し、又は休止したこと
  納税者の方が営む事業について、やむを得ず休廃業をした場合、国税を一時に納付できない額のうち、
  休廃業に関して生じた損失や費用に相当する金額
  ④納税者がその事業につき著しい損失を受けたこと
  納税者が営む事業について、利益の減少等により、著しい損失を受けた場合、国税を一時に納付できない額のうち、
  受けた損失額に相当する金額
  ⑤納税者に上記①から④までに類する事実があったこと
 
◆猶予期間
 納税の猶予を受けることができる期間は、1年の範囲内で申請者の財産や収支の状況に応じて、最も早く国税を完納することができると認められる期間に限られます。なお、納税の猶予を受けた国税について、申請者の財産や収支の状況に応じて、猶予期間中に分割して納付する方法によることを、税務署長が定めることがあります。
 
◆納税の猶予の効果
・新たな差押えや換価(売却)などの滞納処分の執行を受けません。
・既に差押えを受けている財産がある場合には、税務署に申請することにより、その差押えが解除される場合があります。
・納税の猶予が認められた期間中の延滞税の全部又は一部が免除されます。
 
2.換価の猶予とは
 国税を一時に納付することにより事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあると認められる場合に、申請に基づいて差押財産の換価(売却)が猶予される制度です。
 
◆申請要件
 次の①から⑥に掲げるすべての要件に該当する場合は、換価の猶予を受けることができます。
  ①国税を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあること
  ②納税について誠実な意思を有すると認められること
  ③換価の猶予を受けようとする国税以外の国税の滞納がないこと
  ④納付すべき国税の納期限から6か月以内「換価の猶予申請書」が所轄の税務署に提出されていること
  ⑤納付を困難とする金額があること
  ⑥原則として、猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供があること
※ただし、以下のいずれかに該当する場合には、担保を提供する必要はありません。
 ・猶予を受ける金額(未確定の延滞税を含む。)が100万円以下である場合
 ・猶予を受ける期間が3か月以内である場合
 ・担保として提供することができる財産がないといった事情がある場合
 
◆猶予期間
 換価の猶予を受けることができる期間は、1年の範囲内で申請者の財産や収支の状況に応じて、最も早く国税を完納することができると認められる期間に限られます。なお、換価の猶予を受けた国税は、原則として猶予期間中の各月に分割して納付する必要があります。
 ※換価の猶予を受けた後、猶予期間内に完納することができないやむを得ない理由があると認められる場合は、当初の猶予期間と合わせて最長2年以内の範囲内で猶予期間の延長が認められることがあります。
 
◆換価の猶予の効果
 税務署では、提出された申請書及び添付書類の内容を確認して、猶予の許可・不許可、猶予を許可する金額・期間などの審査を行い、猶予が許可された場合は、以下の効果があります。
 ・既に差押えを受けている財産の換価(売却)が猶予されます。
 ・差押えにより事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある財産については、差押えが猶予又は解除される場合があります。
 ・換価の猶予が認められた期間中の延滞税の一部が免除されます。
 
 
税理士法人CROSSROADでは、「納税の猶予」または「換価の猶予」の申請のお手伝いをさせて頂きますので、新型コロナウイルス感染症の影響等により、税金を一度に納付することが困難な場合は、お気軽にご相談下さい。

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