コラム

生前贈与・相続時精算課税制度の見直し

税務

今回は、令和5年の相続税・贈与税の税制改正で大きな話題となった、「生前贈与の加算期間の延長」と「相続時精算課税制度の見直し」についてご説明します。

1.生前贈与加算期間の延長

①生前贈与の概要

 相続税は通常、被相続人の相続開始時に、その財産の相続人に課されます。ただし、生前にその財産を被相続人から相続人へ贈与していると、その財産は相続税の課税対象ではなくなります(贈与時に贈与税の課税対象にはなります。)。その生前に財産を贈与しておく行為を、生前贈与といいます。

 

②加算期間の延長とは

 ①には例外があり、生前贈与した財産のうち、相続開始前3年以内の生前贈与財産は、相続財産と同様の取り扱いをされ、相続税の課税対象となります。これを、相続税における生前贈与加算といいます。

今回、その3年という加算対象期間が、「7年」に延長されました。具体的には、改正後は次の期間の生前贈与財産が、相続税の課税対象となります

(ただし相続開始前3年超の生前贈与財産は、その合計額から100万円控除して計算)。

 

 

今までは、先の相続を見越して、相続税対策の一つとして生前贈与をおこなうのが一般的でしたが、更に加算対象期間が長くなったことにより、相当先まで見越して、より早くから生前贈与をおこなう必要が出てきます。

 

2.相続時精算課税制度の見直し

①相続時精算課税制度の概要

 1.で生前贈与の概要をご説明しましたが、生前贈与をおこなった際に課せられる贈与税の課税方式は暦年課税方式といいます(通常の課税方式)。

相続時精算課税は、選択の届出をすることで、暦年課税方式と違った方法で、贈与税の計算をすることになります。暦年課税方式では、毎年110万円の基礎控除があり、それを超えた部分につき、累進課税制度により贈与税が課せられますが、相続時精算課税方式では、累計で2500万円までは贈与税がかからず、それを超えると一律20%の贈与税が課せられるという違いがあります。

 

②制度の見直し内容

 相続時精算課税制度を選択した場合、累計で2500万円を超えると、一律20%の贈与税が課せられていました。今回の見直しで、その2500万円とは別に、暦年課税方式と同様に、毎年110万円の基礎控除が追加で設けられることとなりました。

 

3.まとめ

令和5年の税制改正は、相続税・贈与税の改正が大きな話題となりました。ただし、生前贈与加算期間は長くなったものの、生前贈与加算の対象となる人物は変わらなかったり、まだ相続税対策をとる余地が残されるような改正にとどまった、という印象です。

しかし、更なる高齢化社会に向けて、今後の相続税・贈与税の増税は必至であると見込まれています。相続税対策は、早ければ早いほど効果が大きいものです。

相続税対策については、是非、CROSSROADグループにご相談ください。

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