コラム

令和6年度税制大綱概要(2)

税務

今回は令和6年度税制大綱概要より、外形標準課税における対象法人の見直しについてご説明いたします。

■外形標準課税のあらまし

外形標準課税は、地方税である法人事業税の一部として平成16年に導入されました。資本金の額または出資金額が1億円を超える法人に対し、「付加価値割」及び「資本割」という外形基準によって課税する制度です。

外形標準課税導入前の法人事業税は、原則として「所得」を課税標準としていました。しかし、所得のみによる課税は景気に左右されやすいため税収が不安定になり、都道府県の安定的な行政サービスの提供に影響を及ぼすという問題がありました。そこで税負担の公平性の確保、応益課税、税収の安定化、経済活性化の促進を図るため、課税ベースを拡大しつつ法人所得に対する税率を引き下げられてきました。

しかし、令和5年度の総務省の地方法人課税に関する検討会において、外形標準課税の対象法人数は制度導入時に比べて3分の2に減少していることが報告されました。その要因として課税方式の選択を意図して資本金の額を設定するといった企業行動が見られ、特に、財務会計上、単に資本金から資本剰余金へ項目振替を行う事例や、分社化・持株会社化・外部企業の子会社化などの組織再編の際に子会社の資本金を1億円以下に設定する事例が指摘されました。

 

■改正の内容

外形標準課税対象法人数の減少により、地方税収の安定化・税負担の公平性といった制度導入の趣旨を損なうおそれがあることから、「外形標準課税の対象から外れている実質的に大規模な法人」を対象に制度的な見直しがおこなわれました。

 

1.減資への対応

現行基準(資本金1億円超)を維持したうえで、当分の間、前事業年度に外形標準課税の対象であった法人であって、当該事業年度に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超えるものは外形標準課税の対象とする。

 

《改正前》

(1) 当該事業年度終了の日における資本金の額または出資金の額が1億円を超えている法人

 

《改正後 (税制改正大綱内容) 》

(1) 当該事業年度終了の日における資本金の額または出資金の額が1億円を超えている法人(現行基準の維持)

(2) 次の要件をすべて満たす法人

 ア.前事業年度終了の日における資本金の額または出資金の額が1億円を超えている法人

 イ.当該事業年度終了の日における資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人

 ウ.当該事業年度終了の日における資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超えている法人

 

上記の改正は、令和7年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用されます。

 

2.100%子法人等への対応

資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人等の100%子法人等のうち、資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超えるものは、外形標準課税の対象とする。

 

《改正前》

100%子法人等である法人に対する適用要件はなし

 

《改正後(税制改正大綱内容)》

次の要件をすべて満たす法人

 ア.資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人または相互会社・外国相互会社の100%子法人等である法人

 イ.当該事業年度終了の日における資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人

 ウ.当該事業年度終了の日における資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超えている法人

 

上記の改正は、令和8年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用されます。

 

■改正による影響

・今回の見直しは、外形標準課税の対象を中小企業に広げるものではありません。現行基準である資本金1億円超の適用要件はそのまま維持されるので、現在、外形標準課税が課税されない中小法人に影響はありません。

・増資で資金調達するスタートアップ新設法人も、事業年度末日時点で資本金1億円以下であれば対象外です。

・100%子法人についても産業競争力強化法の特別事業再編計画(仮称)に基づき行われるM&Aにより100%子法人等となった法人は5年間、外形対象外とする特例措置が設けられる予定です。

・外形標準課税の対象となった場合は、実務面では法定実効税率が変更になります。

 

■まとめ

経済産業省公表の「令和6年度経済産業関係税制改正について」によると今後の外形標準課税の適用対象法人のあり方については、地域経済、企業経営への影響を踏まえながら慎重に検討を行う、とあります。外形標準課税を推進しているのは地方行政を所管する総務省が主体ですが、今後も中小法人に対する影響がないように一定の配慮がされる見通しです。ただし、今回の改正にみるように実質的に大規模な法人の減資などの資本政策には注意が必要となります。

 

外形標準課税に影響を及ぼす増資減資などの資本政策については、ぜひ一度CROSSROADグループへお気軽にご相談ください。

その他関連コラム